事業脚本家という生き方。

フィールド・フロー代表取締役 渋谷 健のブログ。

農林水産省事業「戦略的技術開発体制推進セミナー」岡山レポート ~事例に基づくネットワークの必要性~

 2/1は岡山にて、農林水産省事業「戦略的技術開発体制推進セミナー」の4発目を開催してきました。今回はより実践的な事例を取り上げて、研究ネットワークはどうあるべきなのかを壇上で議論することになりました。そして実践的な観点を踏まえると、「研究ネットワークがなければ成果はなしえなかった」という結論に至り、研究ネットワークの必要性を認識した場となりました。

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 今回は宮崎県の新福青果の新福秀秋社長も登壇。実際にIT企業などの知恵を借りて、経営を効率化し、高齢者雇用や障害者雇用も実現して成長していった体験もお話くださいました。研究ネットワークを使っている、理屈ではなく成果のある実績をもってお話しされる内容は、どんな言葉にも説得力があるのですね。

 さて、パネルディスカッションでは、そもそも研究ネットワークは投資効果があるのか、という概論からスタートしました。登壇されているパネリストの皆さん全員の共通見解は、「投資価値がある」というもの。今回は前回の名古屋会場にひき続き、農研機構の後藤先生も参加されていたこともあって、新福社長とともに事例を交えてお話しくださいました。お二人とも新しいチャレンジをする機会に直面したとき、一人だったらどうしようもなかったとのこと。しかしながら、周りに助けてくれる人たちがいたからこそ何とかなった。その人たちとのつながりは、まさに今回のセミナーでいうところの“研究ネットワーク”だったということでした。

 パネルディスカッションの後半は、さらに新福社長と後藤先生の具体的な事例を掘り下げながら、研究ネットワークの強みはなにか、どうあるべきなのかを議論していきました。要点をまとめると、以下のようになります。

〇ネットワークはシーズとニーズを融合を果たし、ビジネスを生んでいくための資源
・ネットワークには自然とシーズとニーズが集まってくる
・ネットワークが共有するデータベースを持つことが効果的
・シーズ、ニーズを集めて対話の機会を持つことで新たなビジネスが生まれてくる

〇研究ネットワークは、新たなニーズを創り出していく機能も担う
・より大きなビジョンを共有し、やるべきことを明らかにしていくことができる
潜在的な危機意識を表出化・共有し、課題に対応していくことも可能になる

〇研究ネットワークは、社会関係資本ソーシャル・キャピタル)としての財産
・関係性が多様に深く持てることで、新たなチャレンジを可能にする
・財産である以上、増やしていくこと・資産運用が可能になる
・財産のあり方によって成果が変わることに留意していく

〇研究ネットワークは付加価値を創出し得る
・従来の仕事を継続的に行うのではなく、新しいチャレンジ=不確実性への挑戦をすることに意義がある
・新たなチャレンジの中から、多様な観点で何かしらの付加価値を生み出すことが可能となる
・研究ネットワークはこうしたチャレンジや付加価値創出を支援する


 今回のセミナーの前提仮説として置いている、「ネットワークは資源である」という考え方は、実践の場を通じてすでに実証されているといってもいいかもしれません。そして地域や組織を超えて相乗効果を発揮し、従来不可能であったことを可能にするという点も。となれば、研究ネットワークを活用するかどうかは、研究ネットワークに参加する組織・個人の意思・戦略性に大きく依存するといってもいいのかもしれません。研究ネットワークの価値が見えないのは、単純にその理解が足りないだけであり、理解したのであれば活用する戦略が組めていないということでしかないといえるのかなと感じています。要するに、何かやりたいなら研究ネットワークは使うべきだ、ということですね。