事業脚本家という生き方。

フィールド・フロー代表取締役 渋谷 健のブログ。

農林水産省事業「戦略的技術開発体制推進セミナー」名古屋レポート ~お金と研究ネットワーク~

 1/27に今度は名古屋にて、農林水産省事業「戦略的技術開発体制推進セミナー」を開催してきました。これで3会場目。今回は、研究ネットワークが活動するための資金をどうするべきか、という相当踏み込んだ議論でもりあがりました。結局のところ、研究ネットワークに投資する価値・意義を感じさせられるか、というところが要点だったと受け取っています。研究と投資、密接な関係のはずが日本ではばらばらになっていることが多い。この部分を是正していくことが研究ネットワークを活かすために不可欠なのですね。

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 今回は農研機構の後藤先生の講演が、研究ネットワークには何が必要かを明確についたものでした。特に印象深かったのが研究ネットワークをつくるにあたっては参加者同士のWin-Winの関係性が必要であり、以下の要素が必須となるということです。これらの要素を踏まえた後藤先生の活動は、ムラサキサツマイモの研究から、赤霧島などの有名な商品を生み出すに至っています。実績が伴えば、もはや納得する以外がない方法論ですね。

 研究ネットワークでWin-WInであるために。
 1)経営・企業として自立していること。
 2)自社の強みとなるコアコンピタンスがあること。
 3)相互理解が図られていること。
 4)価値観や情報を共有していること。
 5)目的や目標の共有が図られていること。
 6)同じ「場」を共有していること。
 7)相互に意思疎通ができる広いネットワークを有していること。
 8)あくまでも対等な関係であること。

 参考URL
 https://kumamoto.agri-academy.jp/fo/f/245

 

 このほか、市場ニーズをつかむこと、強み・弱み・機会・脅威(SWOT)を整理すること、チームとして動ける状態を創ること、PR活動を行うこと、プラットフォーム(ひととひと、情報と情報などの結節点)をつくることが不可欠ということも教えていただきまし。おっしゃる通り、とっても納得です。

 さて、私が担当したパネルディスカッションでは、こうした議論を踏まえて今回はお金の話に焦点が当たりました。行政の補正予算が1月に執行が決まっても、3月までに使い切らなければいけない、なんてことが起きます。そうなると、実質的に何もできないままお金を無理やり使わなければならなくなる。加えて、補正で単発的に予算をつけても翌年度から予算がなくなり、継続的な活動が難しくなる、といったことも起き得ます。行政予算の仕組みの限界というやつですね。こうした行政予算の仕組みの中で、研究ネットワークという継続性が求めらえる活動をどのように動かせばいいのかは悩みどころになります。

 このとき、ひとつの観点として行政予算だけに頼らない、というものを持つと状況が変わります。民間投資を引き出せば、より自由に継続的に動ける可能性が出てくるわけです。

 しかし、現実問題として投資を引き出すことは簡単ではありません。短期的な視座では研究ネットワークの成果は見えずらいですし、投資に見合うリターンも見通しにくいです。だから投資する側の考え方、価値観から変えることが必要となります。

 また、投資というよりは資金調達・資金投入と考えたほうがより視野が開けるでしょう。株式のような投資だけでなく、金融機関による融資、寄付、行政予算の執行などすべて資金調達の手段です。

 つまり、研究ネットワークは5年・10年のスパンで「社会に必要なもの」を創り出すための施策であり、長期的視座から資金投入する対象であると考えるべきなのです。社会的責任を果たすための事業として捉える、といってもいいかもしれません。そのうえで、長期的戦略の観点から自社が資金投入(現物や人材なども含む)できるかどうかが研究ネットワークの参加条件になります。当然ですが自分でなにもしないひとに、ほかの人は手を貸しません。自分が何も投じないネットワークに、人が何かをしてくれるわけがないのです。そのうえで、あらゆる資金調達メニューを駆使します。民間投資はもちろん、金融機関による融資、公的資金の投入など使えるものを使うわけです。行政施策と連動すれば、PPPやPFIといった形で実装することも可能になります。

 ただ、こうした研究ネットワークにおける投資、資金調達の施策はほとんど動いていません。上記のようなお金に対する考え方自体の認知がまだまだ進んでいないことが大きな要因でしょう。今回行っているセミナーのような場では、研究ネットワークのもつ価値を、資金を投入する価値があるもの・社会的価値があるものとして伝えていくことが必要なのだと改めて感じました。

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