事業脚本家という生き方。

フィールド・フロー代表取締役 渋谷 健のブログ。

パネルディスカッションを楽しくしよう!その1 ~そもそもなんでパネルディスカッションやるの?~

 よくセミナーでパネルディスカッションという時間が設けられます。モデレーターファシリテーターと呼ばれる進行役を置いて、パネリストとよばれる登壇者が複数名壇上に上がり、来場者の前でお題(テーマ、問い)に対して意見を交わすもの。しかしこのパネルディスカッション、9割がたがつまらないんです。

 なので、そもそものパネルディスカッションのやり方、さらにパネルディスカッションを面白くする・楽しむ方法を事業脚本家的に考えてみました。まずはそもそもそ、なんでパネルディスカッションをやるのか、というところから。

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 パネルディスカッションをやる目的は大きく3つです。もちろん、大前提として「何をお題にするか」というところが明確となっていることが必要です。ただ、このお題はパネルディスカッションを含むイベントを開催する意義とほとんど同じで、「来場者に何を伝えたいか」というところを明確にしていれば問題ありません。逆にイベント自体が「来場者に何を伝えたいか」というところが明確になっていないようならば、そもそもイベントの作り方から考え直しですね。

 ちなみにこのパネルディスカッションの目的である3点を外していると、“ただやっているだけ”の場になり、登壇者も来場者もしらけます。よくある間違った目的設定は、「偉い人の顔を立てる」というもの。〇〇先生に登壇の機会がないのはまずい、○○社の立場からの情報発信を盛り込まないとけいない、行政の○○の意見はいれるべきだ、みたいな世間体ばかり気にした目的設定です。お題からも離れちゃってるし、内容にもつながらない、なんともお粗末な内容になりやすい目的設定です。

 では、具体的にパネルディスカッションを行う3つ目的を一つ一つ整理してみましょう。

 

①各分野を代表した立場から、お題に対するそれぞれの意見を並べてみる
 同じお題でも分野や立場、体験してきた経験や知識、年代や地域性などが異なれば意見が変わってきます。どんな人がどんな意見を持っているのか、それぞれを言葉にしてもらい、そして並べてみるということがパネルディスカッションの第一の目的です。
 このとき、どれだけ踏み込んだ本音の意見を引き出せるか、がカギです。一般論的な話で終わってしまうとそれでしらけちゃいますからね。普段は聞けない、踏み込んだ率直な意見がでてくれば、それだけで“お、ちょっと今日は面白そうだぞ”という雰囲気が出てきますし、来場者にしてみれば珍しい話が聞けてとっても嬉しい。あとはその発言ができるような雰囲気づくり・安心感づくりができるかが肝ですね。

 


②それぞれの立場同士の対立軸と共通項を明らかにする
 2つ目の目的は、並べた意見から対立していることと共通していることを整理することです。いろいろな立場からの意見ですからね。一致するものだけではなく、食い違うこともたくさんあります。これをできる限り明確に整理していく。そうすると、なんで今までうまくいかなかったのか、逆にどうしてうまくいったのかなどの理由が見えてきます。
 ここが結構あいまいにしがち。「みなさん、似たような意見で、共通して〇〇ですね」なんてざっくり進行役がまとめてしまうなら、目も当てられなくなってしまいます。特に対立軸を整理することは大事で、なぜ対立しているのか・意見が食い違っているのかを深堀するところに新しい発見があり、より深い理解を得ることに繋がります。来場者はこの深堀りがあるからこそ、“聞きに来てよかった”と思ってくれるわけです。

 


③問い(テーマ)に対しての全体共通理解をつくる
 3つ目の目的は全体的な理解をつくることです。いろいろな意見が出てきた結果、結局全体といしてはどうなっているのかを一歩引いて眺めてみる。パネルディスカッションを通じて、もしかしたら整然と一貫した意見が並んでいるのかもしれないし、あちこちに飛躍してとっ散らかった状態になっているかもしれない。いずれにしても結果として出てきた意見全体を眺めてみたら、何に気づけるかを改めて第三者的な立場で見てみるのです。そうすると、これまでとは違った新しい気づきが得られます。その気づきはパネルディスカッションのお題に対する、全体の共通理解として置くことができるものになり、登壇者・来場者含めて全員の“お土産”になります。パネルディスカッションの成果ですね。
 このとき一番やっちゃいけないのが、結論ありきで無理やりに落ちをつけちゃうことです。進行役としては最低だし、せっかくの議論も全部つぶしてしまいます。偉い先生が進行役をやっているケースにとっても多いですね。できれば一通り意見を出し終わったら、登壇者一人一人が一歩引いたところからの気づきを出し合い、その気づきが重なり合うところがどこになるのか、重ならないところがどこなのか、といった整理をしてまとめると、パネルディスカッションとして何が得られたのかはわかりやすくなってきます。


 というわけで、パネルディスカッションを企画する際・行う際の参考になりましたら幸いです。ぜひ驚きと喜びと安心のある、楽しいパネルディスカッションを。