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事業脚本家という生き方。

フィールド・フロー代表取締役 渋谷 健のブログ。

農林水産省事業「戦略的技術開発体制推進セミナー」松山レポート ~継続的に率直かつ真摯で対等な対話の場づくりを~

 3/10、松山にて農林水産省事業「戦略的技術開発体制推進セミナー」の第8弾を開催して参りました。ついに最終回。各会場同じテーマであるにもかかわらず、パネルディスカッションでは実に多様な議論に発展したことは、ファシリテーターとして参加した私としてはとても印象深いです。そして今回は最終回に相応しく、日本の農業をとりまく社会に大きく切り込んだ・踏み込んだ内容となりました。結果、本当に日本の農業・一次産業の未来を感がるのであれば、継続的に率直かつ真摯で対等な対話の場づくりをまずは行うことが重要だということが共有できました。

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 今回は研究者の立場から農研機構からみかんの研究をされてきた杉浦先生と、生産者の立場から技術を活用して農業の効率化を推進する農匠ナビ会長の福原氏に話題提供者として登壇いただきました。特に杉浦先生のみかんの成分であるβークリプトキサンチンが骨粗しょう症に効く、というお話は愛媛・松山の会場にぴったりの内容でした。

 そんなお二人を交え、さらに会場からの意見も取り入れながらのパネルディスカッション。冒頭、いきなり出てきたのは、「研究ネットワークの必要性はわかっている。しかし、日本の農業をどうしたいのか、その方針を出す政治家や行政、関連組織の方向性が見えない」という踏み込んだもの。恐らく農林水産業に関わっている・いないに関わらず、なんとなくみんなが思っていたことで、なんとなくタブーにして踏み込まなかったところがパネルディスカッションのスタートラインとなりました。

 お役所仕事的にやるならば、このテーマはお茶を濁して終わらせるのですが、そんなことでは「驚きと喜びと安心」がありません。事業脚本家としての私の理念に反します。というわけで、そのまま突っ込んで議論。

 すると登壇されている方も、会場にいらっしゃったほかの方たちからも、表現は違えど同様の問題意識が見受けられます。とくに農林水産業に関わる要素を個別単体で見てしまい、流通・消費なども含めた社会全体の連動性を見ていないこと、結果打ち手が局所的になってしまっており根本解決にいつまでも至っていないこと、さらにはこれに対応していくための議論の場も教育環境もできていないことは共通認識として得ることができました。

 そして話はさらに深く、いい意味で泥臭くなり、研究現場や農業現場のしがらみについての議論につながりました。研究者にとっては組織の中で成果を上げる、研究予算を得ていくためには論文が大事になります。そしてあまりにも論文を書くこと・発表することに焦点を当てすぎて、農業分野の研究をしているにもかかわらず研究室から出ない、なんていう方が実際にいる。一方で農業現場も自分たちのやり方、慣習に対して頑なになりすぎて、外とのつながりを持たず、疑心暗鬼になって、新しい可能性を受け入れることができなくなってしまっているひともいる。そんな本音を議論の中から見ることができました。

 そしてこれらの奥には利権構造も見え隠れしています。本来、より生産性の高い農業を実現するために、立場は異なってもいろいろな方たちが繋がり、活躍することができるはず。にもかかわらず、農業としての生産性を高めること・価値を高めることよりも、もっと大事にされてしまっている利権が存在しているのです。しかも、それをわかっていても誰も切り込めない。切り込んでしまえば自分の立場が危ぶまれてしまう。そんな複雑な状況が起きているのです。

 ではどうしていくべきか。まず社会全体の連動性を捉えることが必要です。そのうえで、農業をテーマにして多種多様なひとが真剣に対話するところから始める。対話がなければ何も知ることができませんし、見ることも、触れることもできません。政治家だろうが生産者だろうが研究者だろうが、裸一貫対等な立場で真剣に向き合うことから始まるのです。そしてそこから生まれてきた可能性に真摯に取り組んでいくことが必要になるわけです。

 もうひとつ必要なことは、やはり教育。農業について知っていくことも大事なのですが、それ以前のより一般的な食育も大事になります。なにが美味しいもので、何が体に良くて、逆にこういう食べ方はよくない、といったことを知っていくことは社会全体で必要なことになります。この食育をきっかけに、農業とはどういった意味が社会的にあり、今後どうしていかなければいけないか、といったところを学んでいける環境づくりも必要になっていきます。

 農業の抱えている問題は簡単ではありません。研究ネットワークはその解決策の糸口にはなり得ます。しかしそれ以前に、まずは多様な利害関係者が率直に、真摯に、かつ対等な立場で対話する。そこから始めなければ何も変わなないとうことを改めて認識する場となりました。

 またこうなってくると別会場での議論にも挙がっていましたが、ファシリテーターやプロデューサーの存在は非常に重要になります。教育は長期的な観点で必須となりますが、短期的にも手を打っていかなければなりません。数は決して多くなりませんが、実践的に活動できるファシリテーターやプロデューサーを確保していくことは必須命題となるようです。手前みそではありますが、事業脚本家である私は、プロのファシリテーターでありプロデューサーです。身を引き締めて、今後も農林水産業を始め各種産業分野に関わっていきたいと感じています。