事業脚本家という生き方。

フィールド・フロー代表取締役 渋谷 健のブログ。

農林水産省事業「戦略的技術開発体制推進セミナー」金沢レポート ~中立的交渉力あるファシリテーターが必要に~

 2/10は金沢にて5か所目の農林水産省事業「戦略的技術開発体制推進セミナー」を開催して参りました。今回もパネルディスカッションのファシリテーターとして参加。研究ネットワークをつくっていくためのコミュニケーションの重要性、とくに中立的な交渉力が必要になるというメッセージが発信されました。またこの中立的交渉力を発揮するために、ファシリテーターの必要性も改めて認められた場となりました。

f:id:fieldflow:20170212090515j:plain


 今回は具体的な事例として、農研機構 食農ビジネス推進センター 坂井 真 センター長と株式会社ぶった農産 佛田 利弘 代表取締役社長が登壇。それぞれ研究者の立場から、生産者の立場から研究ネットワークの事例を紹介。研究者や生産者、その他自治体や農協、企業などの立場をこえたつながりをつくった結果が成果に結びついていることが共通した特徴です。

 そしてパネルディスカッション。一番の議題は、どうやって研究者や生産者が立場を超えてつながるか。会場からも昨今話題となっている農協との関係性をどうやって扱っているかなど、踏み込んだ質問も飛び出してきました。他にも大学が相手にしてくれないのではないか、共同研究をしても知的財産を研究者が囲ってしまうのではないか、生産者が研究者にいいように使われてしまうのではないか、といった生産者サイドからの不安も言葉となって場に現れ、表面的ではない議論をパネルディスカッションの中で行うことができたと感じています。こうした踏み込んだ話をしているほうが、ファシリテーターを務めた私としても楽しいのですよね。

 さて、議論のほうを振り返ると、一言でいえば“コミュニケーションの質”が重要であるというところにまとまります。ただ、このコミュニケーションという言葉だけで簡単に片づけられるほどの代物ではありませんでした。以下パネルディスカッションの議論からのポイントを踏まえて。

 まずコミュニケーションの中でも“交渉力”が必要不可欠となります。交渉力をつけるには、それぞれの状況・背景を理解しなければいけません。大学や企業や自治体、農協、生産者などがそれぞれどのような思惑や仕組みで動いているのか、どこで繋がり得るのか、どういったものをリターンとして求めているのかを理解してバランスをとっていくことが必要なのです。Win-Winをつくるのは最低限なのですよね。ゆえに“中立性”も必要となってきます。

 ただ、こうした中立的交渉力をもったコミュニケーションが出来る人、となると限られます。広い知識とコミュニケーションに関わる専門性をもっていることが求められます。ゆえにファシリテーターと呼ばれる存在が必要不可欠となります。

 しかし、現実問題としてファシリテーターが中立的であるためにはいくつかの問題があります。まずまだファシリテーションの必要性が認知されていないこと、加えてお金を払う・報酬を払うという感覚が社会全体に乏しいことがあげられます。このためファシリテーターとして活躍する人も限られており、さらには会議の進行役というレベルを超えて研究ネットワークを動かすという次元で動ける人は非常に少なくなります。こうした状況に対しては、国の支援なども必要ではないか、という議論に発展しました。

 ちなみに私はファシリテーターとして活動するにあたり、まさにこの中立性を保つために資本面から完全に独立し、自分の会社として自律採算で動いています。そうでなければ中立性が失われ、交渉力あるコミュニケーションが取れなくなる恐れがるからです。

 こうしたファシリテーターの育成と活躍の場の提供、活躍するための環境整備は今後、研究ネットワークや産学官連携プロジェクト、組織・地域を超えた連動プロジェクトを行っていく上では不可欠なのかもしれません。もちろん、ファシリテーターいればそれだけで中立的交渉力を持ったコミュニケーションはOKということはなく、具体的な成果目標・事例や研究者・生産者などの当事者同士の繋がり・信頼関係、情報共有の仕組みなども必要になります。

 こうした研究ネットワークを創る・活かすためのコミュニケーション学や、ファシリテーションの在り方、さらには技術活用といったところまで統合した教育施策は創ってもいいかもしれませんね。すでにMOT(技術経営、Management Of Technology)という言葉はあるので、これを発展させてMOA(農業経営 Management Of Agricalture)なんていうのもあってもいいかもしれません。

 今回も自由闊達な議論ができ、ファシリテーターとしても楽しい場を創ることができました。残るは大阪(2/22)、福岡(3/1)、松山(3/10)の3会場。楽しんで回ってきたいと思います。

 

〇申し込みはこちら(無料)  

戦略的技術開発体制推進セミナー 開催のお知らせ | 公益財団法人 未来工学研究所

 

fieldflow.hatenablog.com