事業脚本家という生き方。

フィールド・フロー代表取締役 渋谷 健のブログ。

DBIC×LOCAL 始めます! ~“食”を通じて考え実践する地方創生~

 DBICにて2月から「DBIC×LOCAL」と題して、地方創生の機会を活かした具体的な事業創出の実践に向けての対話の場を創っていくことにしました。特徴は“食”を通じて対話すること。イメージはマンガ「美味しんぼ」のワンシーン。第一弾は宮崎県に焦点をあて、宮崎県庁や実際に宮崎県で食に関わっている方をお招きし、大企業・ベンチャー・省庁・自治体・大学・VC・メディア等の方々も参加いただいて、創発の関係性と新たな気づきを創り出す場にいたします。

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 これまで私は事業脚本家という自分の在り方を見つける以前から、まちづくりやスマートシティ・プロジェクト、産学官民金言連携プロジェクトなどに関わってきました。その中で見えてきたことは、今がまさに“創発する社会”への転換期だということです。これまでの資本主義的な発想、つまりいかに多くを奪い・所有し・成功者になるかという発想は限界を迎えています。一方でそれぞれの持っている価値を提供し貢献し合い、共に新しい価値を創って共有し、ひとひとりが幸せになる、創発する社会を求める機運はさらに高まってきています。この創発する社会は、“シェア”という言葉で表現される領域と捉えていただいて構いません(厳密にはシェアの概念だけではないのですが)。

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 “創発する社会”が見えてきてから、実際に実践の場に関わることで私はさらなる気づきを得ることができました。それは、活かされていない価値・繋がっていない価値があまりにも多いということです。

 まず、ひとの価値が活かされていない、ということがあります。九州で地方創生のプロジェクトに参加しました。他にも地域コミュニティに関わるプロジェクトにも参加しました。主なところでは、北九州市、福岡市、飯塚市などが該当します。この手のプロジェクトは得てして、必然的に地域のひとたちと対話することが多くなります。しかも私に対する依頼は、主にこの対話を活性化させるためのファシリテーターとしての役割でしたので、なおさらです。本当に多くの方々と出会いました。その結果得た気づきは、それぞれのひとが持っているいろいろな経験、知恵が活かされていない、活かす機会がないだけでなく、むしろ潰されてしまっている、というものでした。本当にただもったいない、なんでこんなことになってしまっているんだろうという憤りを感じていました。

 2つ目の気づきは、サービスの価値が活かされていない、というものです。地域を回っていくとどうしてもいろいろなサービスを利用せざるを得ません。飲食店、小売店、宿泊施設、交通、たまに病院も利用します。すると、それぞれの地域に味があり、ユニークで魅力的なサービスが存在していることがすぐにわかります。ただ、ちょっとしたことが足りてないがために、十分な価値を提供しきれていないケースが多くあることも見えてきます。例えばクレジットカードが使えない、ちょっとした案内表記がない、地元ルールで訪問者としてはどうしていいかわらない、といったもの。ちょっとした工夫で大きく変わるのに、もったいないなと感じていました。さらにユニークなサービスであるのに、地域の中ではいまいち評価されていないために苦労している方たちにも出会いました。その状況を見聞きするたびに、残念な気分になりました。経済産業省おもてなし規格認証事業に関わるようになってからはなおさらです。

 3つ目は、農林水産品の価値が活かされていない、という気づきです。農林水産省「知」の集積と活用の場の事業にプロデューサーとして関わり、実際に地域の生産者や生産者を支援している大学の先生、行政の担当者などとも対話する機会が増えました。その結果、本当に丁寧に時間をかけて安心して食べられるいいものを、自然と向き合いながら作っている方がたくさんいました。けれども、なかなか表に出てこない。どんなにいいものをつくっても、大きな流通の仕組みの中に埋没してしまう。せっかくの価値も伝えられないままになってしまう。そんな現実も、もったいないないと感じていました。

 さらにひとも、サービスも、農林水産品も、全部バラバラでちゃんとつながっていませんでした。悩みを解決できるひとが物理的な距離としてはすぐそばにいる(場合によっては友達だったりする相手が解決できる)にもかかわらず、知らないだけ・繋がっていないだけで解決できないまま悩み続けている、ということは日常茶飯事。わざわざ都市部の企業に高いお金払って、長い時間をかけて、結果中途半端な状態にしかならない、なんてことも珍しくありません。繋がっていない、それだけで大きく機会を失っていることがあまりにも多くありました

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 ただ、見かたを変えれば、活かされていないだけであってすでに十分に価値のあるひともサービスも農林水産品も存在しているわけです。繋がっていないだけで、繋げれば機会はやろうと思えば得ることができるわけです。だったら簡単です。やればいいだけ。ひととサービスと農林水産品の価値を活かして、それらの価値をつなぐだけ。単純に関係する人たちを紹介して、やること整理して、実際に動くだけ。

 しかし、この話をすると、多くの企業・行政・大学・金融・メディア・その他地域の関係者(いわゆる産学官民金言)の方たちの反応は決して良いものではありませんでした。
 「本当に価値があるという証拠がない」
 「活かせるかどうか、前例がないからわからない」
 「繋げられる保証がない」
 「どれだけの効果があるか、数字がわからない」
 「詳細な計画を創らないと動けない」
 「予算がないからやれない」
 「担当領域じゃないからやれない」
そんな言葉がたくさん出てきました。

 わからない・やりたくないといった意見にたくさん触れ、最初は「やっぱりだめなのかな」とも思いました。しかし、一歩引いて全体を眺めてよくよく考えてみたら、彼らも明確な根拠があって言っているわけではないし、やったことがあるわけでもない。自分自身というよりは、自分が所属する組織に説明するための情報がほしかったり、体よく断るような理由を示したかったたり、たまに妬みのような感覚で言ってきてる人がいたりと、別に“ひとやサービス、農林水産品の価値を活かして繋ごう”とする動き自体に対して、具体的な踏み込んだ意見が出てるわけではない。「あれ、これ以上会話する必要あるのかな?」という考えがふと浮かび、そしてさらなる気づきを得ることができました。それは、「わからない人に説明しても時間を無駄にするだけ。わからない人たちは批判はできても邪魔はできない。だってどう邪魔していいかもわからないから。むしろわからない人たち、やろうとしない人たちが多いのなら絶好の機会。だったら“わかる”一部の人たちと突っ走ってしまったほうがいい。」というものでした。平たく言えば、“出し抜くチャンス”だったわけです。

 だから本当にやってみました。そうしたら、あっという間にできてしまいました。3か月程度で新しい商流が組めたり、イベントが創れたり、メディア露出できるようになったり。同時に、本当にやるべきことも見えてきました。従来の流通システムでは対応できない部分は新しく創らなければいけないし、メディア露出もより効果的にするには、発信側と受信側のひとを上手につなぐ仕組みも必要です。また関係各所が情報をより直感的に共有する仕組みも必要となるし、安全性や機能性をいかに担保していくか、といったところも課題になってきます。けれど、明確になった課題は解決すればいいだけですから、これもまた進めやすい。

 ではあとは何が必要でしょうか。当然、明確になってきた課題を解決することも必要ですが、より本格的に事業にしていくこと。これまでは実際に現場に触れ、社会の流れを読むことで見えてきた可能性を実証したに過ぎません。これを事業として安定的に、継続的に価値提供できる状態に持っていくことが次のステップとなります。

 となると、より多くの知恵が必要になります。より強く大きな創発の関係性が必要となります。だから今回、DBIC×LOCALという企画を立ち上げました。DBICという場を活かし、DBICに集まるユニークなひとたちの知恵をつなぎ、新しい可能性を創る。しかし、ただ集まっただけでは不十分。だから仕掛けとして、実際に農林水産品に触れてもらう、サービスに触れてもらう、ひとに触れてもらうこと場にしようと考えました。だから“食”を通じた対話にこだわります。気分は完全に美味しんぼの山岡さん状態です。それに一緒に食事をすれば、気分も打ち解けて対話もしやすくなりますからね。

  第一弾は2/2に宮崎県をテーマに実施します。宮崎県からも後援をいただいて、宮崎活魚センターの美人社長・築地加代子さんと、これまた宮崎で活躍されている美人野菜ソムリエの大角恭代さんをお迎えし、実際にお二人が提供する魚(チョウザメ)と野菜をつかった料理を食べながらの対話の時間を創ります。料理は浅草の和食店 おとに協力をいただきました。わかってくれる側の大企業・ベンチャー・省庁・自治体・大学・VC・メディア等多様な方が参加してくださることになり、あっというまに満員御礼。当日ご参加いただきますANAさんからは、ワインを1ケースいただき、準備にも熱が入ります。

 開催レポートは後日。さぁ、準備を頑張ります!宮崎にも事前取材行ってきます!!そして第二弾の開催へとつなげていきたいと思います!

 

参考リンク)

DBIC×LOCAL コミュニティからのイノベーション創出~宮崎~

www.japan-fish.jp

yuinomi.thebase.in

oto.jpn.com

www.service-design.jp

「知」の集積と活用の場