事業脚本家という生き方。

フィールド・フロー代表取締役 渋谷 健のブログ。

大企業病はなぜ起きるのか? ~カタカナ用語の意味を整理したら気づいたこと~

 カタカナ用語の意味を整理してみようシリーズを5回やってみて、気づいたことがあります。一つは大企業病が起きている要因です。もう一つは自分がなぜファシリテーションだけはちゃんとお伝えするプログラムを作ったのか、という理由でした。また、事業脚本家として活動する意義も改めて感じ取る機会となりました。まずは大企業の要因に焦点を当てて気づきを整理してみます。なお、ちょこちょこキングダムの例えが入るのは趣味ですのでご容赦ください。

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 大企業病はもはや大企業だけのものでなく、行政にも大学にも中小企業にも、さらにはベンチャー個人事業主にも蔓延してます。もはや、大企業病は日本の経済、ひいては社会全体の問題ですね。

 ところで、大企業病とはなんでしょうか?簡単にいうと手続き主義で、責任があいまいで、動きが遅い・ない組織の状態です。なんのためにやってるかわからない会議が多かったり、稟議書などの内部書類が大量にあったり、事業責任者が分かりづらく、リスクをとる投資ができなかったり、何をするにも上に伺いを立てて中々行動できなかったり、とはいえ内部序列があって年上や上司は無条件に偉いことになってたりするし、内向き志向なので外との繋がりを避けて隠蔽体質にもなったりする。こんなことが症状として起きてます。しかも面倒なことに当事者に自覚意識はない、あっても本気で治す気がない、他人事として片付けてします、ということが多いのです。いわゆる茹でガエルという奴です。

 

 さてこの大企業病、まずは整理した役割をもとに見て行きましょう。まず見えてくるのが、実質的に軍師的な役割をするプロデューサー:総指揮者がほとんどいないということです。組織的な仕組みの中で役職としては与えてはいますが、実力が伴ってないことが多いのです。なぜかというと、実務担当者の立場から年を重ねるごとに、自動的に上位の名前だけの役職だけ与えられてしまうからです。ディレクター:現場責任者くらいまでは現場経験でなんとかなるかもしれませんが、プロデューサー:総指揮者は別格。キングダムでも王賁が飛び級で将軍になることを昌平君や騰が反対したように、現場感覚とは異なる感覚が必要になるからです。しかし、プロデューサー:総指揮者になるための教育や経験を得る場は提供されることは本当に稀です。加えてオーガナイザー:最高責任者も、プロデューサー:総指揮者は別格であることを理解してなくてはいけません。しかしながら、大企業病の場合、オーガナイザー:最高責任者ですら現場感覚だけで上がってきてしまうことも少なくありません。そうなると当然、残念ながらプロデューサー:総指揮者の意義は理解されませんし、そもそもオーガナイザー:最高責任者としての責務も果たせるか怪しいことになります。

 今度は能力に焦点をあてましょう。大企業病の場合、マネジメント:対処力と、それに従うオペレーション:遂行力を重視しがちです。また、派生してコーチング:促進力には意識が向きます。マネジメント:対処力とオペレーション:遂行力が高ければ、同じことを続けるにはとてもやりやすい環境になります。ただし、リーダーシップ:影響力やフォロワーシップ:協調力といったところは、一部のできる人たちにお任せ・丸投げすることが多く、むしろ成果が出るまでは知らんぷりしてしまうことも少なくありません。また、ファシリテーション:調律力については意識が向いていないので、セクショナリズム(縦割り)や派閥ができやすくなってしまいます。結果。変化対応力に欠けやすくなります。実際、マニュアル作って、人材育成して、作業管理して、という対応は大企業病の組織は大好きですが、新規事業や組織変革はお茶を濁すような対応になることが多いです。

 次に資質に焦点を当てましょう。大企業病に陥っている場合では、レイトマジョリティ:同調者の比重が大きく、次にアーリーマジョリティ:賛同者、ラガード:頑固者というところが多くなっています。そしてアーリーアダプター:先導者は非常に少なく、イノベーター:傾奇者はほとんど皆無と言っていいでしょう。厳密にいうと、イノベーター:傾奇者やアーリーアダプター:先導者の資質を根本的に持っている人たちはいます。ただ、組織的にレイトマジョリティ:同調者であることが良いこととされ、矯正されていってしまうのです。結果、様子見体制、動きが遅い・ない状態に陥ってしまうのです。

 観点の話に移りましょう。大企業病の場合は、よくてアウトプット:成果の観点までアクティビティ:活動、モデリング:企画構想、スタディ:調査探求と絞り込まれた観点のほうに比重が置かれていきます。ゆえに内向きになり、社会に影響を与えていくという発想が生まれません。結果、社会から影響を受け、周囲の環境変化に踊らされ、その状態を避けるために頑なになる傾向が強くなります。

 視野ではどうでしょうか。こちらも大企業病になっていると、よくてドメイン:領域までで、ロール/ファンクション:役割/機能やエレメント:要素のほうが比重が大きくなります個別最適を積み上げていく発想です。これは全体のバランスが取れている状態であれば問題ありませんが、全体のバランスが崩れている状態だと、複雑骨折をしている人に絆創膏を張るような治療をして済ましてしまうぐらい無理のあるものになっしまいます。そして、無理があるという事実に蓋をするかのように、より絞り込まれた視野での議論をして正当化を続けるようになってしまいます。

 

 以上をまとめると大企業病の要因は、
・本来の役割を担えるプロデューサー:総指揮者以上の人を配置せず、単なる役職として与えてしまっている
・イノベーター:傾奇者やアーリーアダブター:先駆者をレイトマジョリティ:同調者に矯正してしまう
・マネジメント:対処力とオペレーション:遂行力に偏重して、リーダーシップ:影響力、フォロワーシップ:協調力がおざなりになり、ファシリテーション:調律力に至っては対応していない
・アウトカム:社会的影響を考えずに、モデリング:企画構想やスタディ:調査探求の短期的・近視眼的な観点のほうが比重が高くなっている
・視野がソーシャル:社会に開かれておらず、ロール/ファンクション/役割・機能やエレメント:要素などの限られた範囲にとどまっている
というところになります。そしてこの状態に自覚症状がないまま突き進んで、茹でガエル状態となっているというわけです。

 

 これら大企業病の要因、キングダムに例えると問題の大きさがよくわかります(キングダムを読んでいる人限定ですが)。プロデューサー:総指揮者である軍総司令でしょうじょう丞相の昌平君がおらず、リーダーシップ:影響力を発揮し、イノベーター:傾奇者として道を切り開く秦国の王・政もおらず、フォロワーシップ:協調力を発揮する昌文君もおらず、だれもアウトカム:社会的影響の観点、ソーシャル:社会の視野も持っていないどころか、目先の重箱の隅をつつくような話しかしない、という状態です。もっと言うと、初期の主人公・信がそのまま腕っぷしだけで軍総司令になってしまい、超保守的な王様と太鼓持ちのような役人が、目先の利益だけで政治や戦争をしているという状態です。そんな中で、他の6国列強による合従軍で李牧に攻め込まれでもしたら、あっという間に国が消滅します。

 こうしてみると、大企業病とは人を、組織を、国を滅ぼしかねない大病、ということになります。社会問題です。しかも大企業だけじゃなく、行政や大学や中小企業、ベンチャーまでこの症状が出ているというのは、本当に困ったものです(私の経験値でしかありませんが)。

 だからこそ、気づいた以上は打ち手を考え、実践していかなければなりません。少なくとも、自分自身がアウトカム:社会的影響の観点、ソーシャル:社会の視野を持ち、ファシリテーション:調律力やリーダーシップ:影響力・フォロワーシップ:協調力の能力を得て、イノベーター:傾奇者かアーリーアダブター:先駆者としての資質を磨き、プロデューサー:総指揮者となれるよう、事業脚本家として研鑽を積んで参ります。

 

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農林水産省事業「戦略的技術開発体制推進セミナー」福岡レポート ~一次産業経営者育成プログラムの実現を~

 3/1は農林水産省事業「戦略的技術開発体制推進セミナー」の第7弾。ようやく慣れ親しんだ福岡での開催となりました。前回の大阪で苦労させらてた花粉症をなんとか抑え込み、大阪会場に引き続き“人”の重要性を掘り下げた議論となり、とくに現代の一次産業経営者の育成プログラムの必要性を議論する場となりました。

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 今回は農研機構の服部育男先生と、株式会社ぶった農産の代表取締役 佛田利弘氏に事例紹介をいただきました。お二人に共通していたことは、人とのつながりを大事にしているということ。しかも真摯で対等な立場から信頼関係を丁寧に創り、その結果が事業成果に結びついているということでした。

 お二人の事例を踏まえてパネルディスカッションへ。まずは冒頭でてきたことが、ネットワークと集落は似ている、という議論。集落には共通した目的(生活する、衣食住を保つなど)があり、そのために互いに協調し、必要に応じて迅速に対応し、かつ継続させていくための機能が備わっていました。ネットワークに求められることも同じです。つまり、地域に根差したものである集落の考え方を、より機能的にとらえ、地域性を排除して共通のテーマでくくったものがネットワークと言えそうです。

 そしてこのネットワークを効果的に活用していくためには、プロジェクトマネジメントの発想が必要だという議論にもなりました。多くのメーカーでは当たり前にやっているプロジェクト管理ですが、農林水産業の現場ではまだまだ当たり前にはなっていません。ですから、こうしたプロジェクトマネジメントのノウハウを持ち込むだけでも、ネットワークは成果につながる資源として活用することができそうです。

 しかしながら、結局のところこうしたネットワークを動かしていくのは人であり、人の教育、人と人の関係性は無視できません。とくに教育という側面では、農林水産業の専門知識に加えて、経営や技術など多様な分野の議論が理解できる程度の知識は持っていることが今後求められて生きます。しかし、そんなひとは簡単には現れません。ではどうするか。チームでやるしかないのです。それぞれの分野に明るい人たちがチームを組んで、互いにフォローし合う・教え合うことができれば、多少時間はかかるかもしれませんが、必要な機能を果たし、ゆくゆくは必要な人を育てることができます。当然、この間チームワークが求められます。ゆえにお互いに敬意をもって繋がれる信頼関係を創ることは不可欠となっていきます。

 またネットワークは必ずしも先進的な取り組みだけに活用するものでもありません。出る杭を伸ばして成果を出すことももちろんできますが、そうした成果を一般化・単純化して広めていくこともネットワークが担える役割です。このあたりを一貫して行えるようにしていくことが今後の課題でしょう。

 全体として議論は多岐にわたりましたが、総括してみると、“一次産業経営者の育成”がプログラム化できていないことが大きな課題と言えます。ネットワークは一次産業経営者が扱う資源のひとつに過ぎません。より高度な教育プログラム、MOT(技術経営)のような一次産業の経営者向け教育プログラムをつくっていくことは、今後至上命題なのかもしれません。

 

ソーシャル?ドメイン?カタカナで表す”視点”の意味を整理してみた

 カタカナの意味を整理してみようシリーズ 第5弾。今回はソーシャルやドメインなどものごとに対する視野を表す言葉を整理してみたいと思います。いつものごとく、事業脚本家としての経験を踏まえ、今回も愛読書「キングダム」を例えに使って。なお、毎度のことながら一般的な定義とは異なるので、悪しからず。

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 さて、前提整理。今回はカタカナで表される視野を表す言葉を整理していきます。ところで視野とは何でしょう。ここでは、意識している対象範囲と位置付けていきたいと思います。視野が広ければいろんなことを意識していて、狭ければ特定のものごとに焦点を絞り込んでいる、ということになります。また、視野は広げたり、焦点を絞ったりすることが教育や経験を得ることによって出来るようになると考えます。では、今回もカタカナで表される取組・成果がどんなものかイメージしやすいように、漫画「キングダム」を例にとって解説していきます。


〇ソーシャル : 社会
 社会全般の動きが対象範囲となります。社会全体の動向、政治や経済、技術確信、環境問題に社会問題と多岐に渡ります。関連性も見えにくく、時間の流れも関わります。とても複雑で、常に想定を超えて変わり続ける難しいものごとの流れを捉えることが求められます。
 キングダムでいうと、やはり秦国の王・政や、左しょうじょうの昌平君が常に意識している範囲でしょう。他にも李牧などももっています。国づくりには不可欠な視野ということですね。


ドメイン : 領域
 自らが狙っている市場や地域、業界などの領域を対象範囲とします。対象領域についてのあらゆる動向を意識することになりますが、関連性が見えやすいことが特徴です。複雑ではありますが、ある程度整理して捉えることが可能になります。
 キングダムでいうと、一つ一つの戦が該当します。ゆえに王毅をはじめとする将軍たちが戦場を捉える視野、つまり個々がどういう戦況にあり、どう手を打つべきかを考える姿がイメージと重なります。


〇リレーション : 関係性
 自分がつながっている相手との関係性、つながり方を対象範囲とします。つながってる相手の動向をつねに追いかけ、相手に合わせて対処していきます。相手に焦点を絞ることで観察しやすく、状況も客観的に捉えやすくなります。
 キングダムでいうと、個々の部隊長の視野に当たります。他の部隊の動向は一旦横に置き、自分の兵たちの士気や相対する敵の状況を捉える視野です。百将、三百将として戦場に出ていた信はこの視野で戦っていたことでしょう。


〇ロール/ファンクション : 役割/機能
 自組織や個人の果たしている役割や機能を対象範囲とします。基本的に内部的な状況を常に監視し、役割や機能を十分果たせているかを評価し、問題を捉えて対処していきます。対処が内部に集中する分、素早く適切に、そして十分な量を行うことが可能になります。
 キングダムでいうと、目の前のことに猪突猛進する初期の主人公・信などがイメージと会います。多くの兵たちも同じでしょう。自分の役割・機能をしっかり果たさなければなりませんからね。


〇エレメント : 要素
 自組織や自分の持っている特定の要素、部品、側面を対象範囲とします。細かいところを丁寧に扱い、対処していきます。企業であれば個々の商品やサービス、さらにはその商品やサービスを構成しているもの一つ一つを見ていくイメージです。一つ一つ丁寧に積み上げることは、全体の品質を向上させることにもつながります。
 キングダムでいうと、個の強さを求める蚩尤の一族など暗殺家業の登場人物や、武神を名乗る趙国三大天の龐煖といったところでしょうか。一つ一つの強さの要素を積み上げていく姿が重なります。


 以上のように整理すると、ソーシャル:社会>ドメイン:領域>リレーション:関係性>ロール/ファンクション:役割/機能>エレメント:要素という形で視野が絞り込まれていることがわかります。視野が広いと抽象的になりやすいですが全容を捉えられ、大きな対処ができ、逆に絞りこむと具体性が増して個別の対応の精度はあがりますが全容が見えなくなってきます。要するにバランスが必要なわけですね。

 

 

アウトカム?アウトプット?カタカナで表す”観点”の意味を整理してみた

 カタカナの意味を整理してみようシリーズ 第4弾。今回はアウトカムやアウトプットなど観点を表す言葉を整理してみたいと思います。いつものごとく、事業脚本家としての経験を踏まえ、今回も愛読書「キングダム」を例えに使って。なお、毎度のことながら一般的な定義とは異なるので、悪しからず。

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 まずは前提整理。今回はカタカナで表す観点についての整理を行っていきます。観点は視座という言葉でも置き換えられます。何を意識してものごとを捉えるか、というところの違いは、観点の違いということになります。また、観点なので切り替えることができます。ひとりで複数の観点を持つこともできます。そして新たな観点は教育を受けたり、経験を積むことで得ることもできます。

 では、今回もカタカナで表される取組・成果がどんなものかイメージしやすいように、漫画「キングダム」を例にとって解説していきます。


〇アウトカム : 社会的影響
 社会に対する影響を意識する観点です。社会が抱えてる課題をどう解決できるのか、社会にどのような価値をもたらすのか、といったことを考えます。短期的だけでなく、将来にわたっての超長期的な観点でも考えることが必要になります。
 キングダムでは秦国の王・政や、丞相の昌平君が常に持ってる視点でしょう。中華統一を図るために、いまの一手がどのような影響を民に周辺諸国に影響を与えるかを考え、動く姿に重なります。

 

〇アウトプット : 成果
目的の達成度合い、直接的な成果を意識する観点です。成果を上げた後の影響は入りません。事業としての成果であれば、市場シェア、認知度、売上、利益などが挙げられます。投入した資本(お金や時間など)に対して、得られるものを評価する考え方です。比較的短期的な観点で考えることになります。
キングダムでは一つ一つの戦での勝敗が成果にあたります。故に主人公・信をはじめ、戦場に出る「勝利」を義務付けられた将たちの姿、武功を挙げていく姿が当てはまります。

 

〇アクティビティ : 活動
 実際にやっている活動自体を意識する観点です。成果をあげることよりも、与えられたことを着実に進めることが重要になります。予定通りであること、問題が起きてないことを評価する考え方です。目の前の事象に焦点を当てる考え方です。
 キングダムでは初期の主人公・信のイメージが当てはまります。目の前の相手をとにかく倒せばいい、と考え突き進んでいきます。他にも一般兵にも多い観点かもしれません。目の前の戦を生き延びる、という観点ならなとさらです。


モデリング : 企画構想
 企画や構想を整理し、書き上げることを意識する観点です。実際に動くかどうかではなく、いかに論理的にまとめられるかを重視します。人を納得させる、説得する、理解を得ることを大事にする考え方です。内部管理を大事にする観点と言ってもいいかもしれません。
 キングダムでは文官たちの仕事が当てはまりますね。または軍師学校で学び、実践経験がなかった蒙毅などもイメージとしては重なります。


〇スタディ : 調査探求
 物事の原因を探ったり、研究したり、考えたりすることを意識する観点です。理解をすること、整理をすること、解明することを重視します。研究肌です。自分の関心ごとに焦点を絞って自身の知恵・技能を磨く観点ともいえます。
 キングダムでは趙国三大天 龐煖の姿が重なります。龐煖は将軍というよりも求道者であり、武神として生きることがすべて、強さを磨くことがすべてです。だからこそ、独特の世界観をもたらしています。


 このように整理すると、アウトカム:社会的影響>アウトプット:成果>アクティビティ:活動>モデリング:企画構想>スタディ:調査探求という形で、観点が絞り込まれています。そして当然、同じ物事でも観点が異なると、見えるものが変わってきます
 例えば、キングダムでは同じ一つの戦場でも、アウトカム:社会的影響では中華統一に向けた一手ですが、将軍たちにとっては自分たちのアウトプット:成果のために全力を尽くす機会、そして末端の兵隊たちにとっては戦場を生きるための知恵を得るスタディ:調査探求の機会ということになります。
 ものごとを考えていくためには、状況に応じてどの観点を入れるか、どう組み合わせるかを知っていくことも必要なのですね。

 

 

イノベーター?アーリーアダプター?カタカナ資質を整理してみよう。

 カタカナを整理してみようシリーズ第3弾。今度はイノベーターとかアーリーアダプターとか、カタカナで表現される資質について、事業脚本家としての経験を踏まえ、今回も愛読書「キングダム」を例えに使って整理してみたいと思います。今回も一般的な定義とは異なるので、悪しからず。

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 カタカナで表される資質について、まずは前提を整理してみましょう。今回はイノベーター理論をもとにした整理をします。イノベーター理論というのは、1962年にスタンフォード大学社会学者であるベレット・M・ロジャース教授が提唱した理論です。もはや古典ともいえる理論ですね。イノベーター理論の中で使われている、イノベーターやアーリーアダプターといった定義を資質を表す言葉と位置付けて整理をしていきたいと思います。

 では資質とは何でしょうか。辞書によれば「生まれつきの性質や才能。資性。天性。」(出典:デジタル大辞泉)です。もともと持って生まれたもので、基本的には与えたり、新たに身に着けることはできないもの、とここでは位置付けたいと思います。もちろん、自分が持っている資質に気づけば、磨くことができる、ということも併せて前提に置きたいと思います。

 そして今回もカタカナで表される資質がどんなものかイメージしやすいように(一部の方にとって)、漫画「キングダム」を例にとって解説していきます。なお、コワーキングスペース秘密基地にはキングダム全巻を揃えてあり、こんな話をよくしている仲間がたくさんいますので、よくわからなければ秘密基地に来ていただくのが一番です。

 

〇イノベーター : 傾奇者
 前例にとらわれず、周囲の意見に流されることもなく、我が道を切り開き、進む人が持っている気質。周囲からすると変わり者、理解不能な人に見えます。度肝を抜かれちゃったりします。先人を超えていく力がある人たちですが、一代限りで終わることも少なくありません。イノベーター理論では革新者と呼ばれます。
 キングダムでは、なんといっても呂不韋でしょう。商人の身分から、賄賂を駆使し、権力関係を駆使し、王を除く最高位である相国まで上り詰め、秦国の実権を握るに至りました。また、中華統一を一点の曇りなく目指す秦王・政や、百を超える部族をまとめげ、秦との盟友を結び、勢力を一気に拡大する山界の王・楊端和の姿もイノベーター:傾奇者と言えます。


アーリーアダプター : 先導者
 イノベーター:傾奇者を含めた先人たちから敵も味方もなく純粋に学び、可能性の芽にいち早く気づき、理解し、取り入れ、実現していこうとする気質です。周囲からすると、〝アイディアマン”、“もの好き”、〝挑戦的”な人に見えます。あとに人が続けるように道を示し、創る力がある人たちです。イノベーター理論では初期採用者と呼ばれます。
 キングダムでは合従軍を起こした李牧の姿が当てはまりでしょう。知力によって多数の国を巻き込んで、秦国を窮地にまで追い込んだ手腕には、新しい時代を創る力を感じます。同様にかつて秦に君臨した王毅ら六大将軍も、ひとつの時代を創ったという点からアーリーアダプター:先導者と言えるかもしれません。


〇アーリーマジョリティ : 賛同者
 アーリーアダプター:先導者の姿を見て、憧れて、自らの意思で彼らと同じ道を歩もうとする人たちの気質です。周囲からすると、“時流に乗っている”、“いまどき”な人に見えます。実際に時流を見極めて、流れに乗る力があります。イノベーター理論では前期追随者と呼ばれます。
 キングダムでは主人公の信など、武功を挙げて立身出世を成すことに夢を見る登場人物たちが重なります。蒙恬や王賁といった秦のライバルたちも当てはまります。


〇レイトマジョリティ : 同調者
 アーリーマジョリティ:賛同者の様子を見て、周りに流されるようにものごとに関わるひとたちの気質です。周囲からすると、“ふつう”、“人間らしい”、“親近感がもてる”ような人に見えます。周りに対して安心感や安定を与える力があります。イノベーター理論では後期追随者と呼ばれます。
 キングダムでは主人公である信とずっと一緒にいる、尾平や渕などが重なります。とても人間臭く、愛すべき人物であり、上手に信の手綱を握るあたりの姿からは、影の功労者と言ってもいいかもしれません。


〇ラガード : 頑固者
 周りがどうあっても動かない、流されることのない、頑なな気質です。周りから見ると“気難しい”、“とっつきにくい”、“頑固”に見える人たちです。一見、否定的な表現が並んでいるように見えますが、実は伝統を守ったり、文化を守るための、継続する力に長けています。イノベーター理論では遅滞者と呼ばれます。
 キングダムでは飛信隊がたまたま助けた徐の国のの民などは重なります。伝統を重んじ、たった城一つとなった今でも国として生き続けている。自国の生業である情報を扱いながら。そこには武将とは違う逞しさを感じます。

 

 こうした資質はどれが良い・悪いはありません。例えば、全員がイノベーター:傾奇者だったら世の中崩壊してしまいますし、全員がレイトマジョリティ:同調者だったら何の変化も起きない停滞が続きます。だからこそ、一人一人の資質を見極め磨くことが必要になるわけですね。

農林水産省事業「戦略的技術開発体制推進セミナー」大阪レポート ~最大の課題は”ひと”~

 2/22は農林水産省事業「戦略的技術開発体制推進セミナー」の第6弾を大阪で開催してきました。この日は花粉症のためにコンディションが悪く、お聞き苦しい進行となってしまい、来場された皆様にはお詫び申し上げます。内容は、人の育成の重要性に強く焦点があてられました。

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 今回は農業法人の株式会社穂海 代表取締役 丸田氏が登壇。実際の農業法人の経営現場からの本音をうかがえる貴重な機会となり、来場された皆様も非常に関心を寄せていました。とくに同社ではコメの流通モデルを変え、消費者だけではなく、生産者にもコメを提供するビジネスモデルを確立しており、事業に対するチャレンジは目を見張るものがありました。

 続いてのパネルディスカッション。冒頭にあったのは「失敗」の体験も共有したいという言葉でした。成功事例はたくさんあれど、失敗した事例はほとんど出回らない。しかしながら、失敗から学ぶことは多い。つまり「失敗を通じて得た学び」を共有していくことが、日本の農林水産業においては非常に重要という意見が強調されました。

 そして「失敗から学ぶ」という観点から次に出てきたのはリスクマネジメント。事業にはリスクがつきもので、このリスクをどこまで抑え込むか・対応可能なものにするかが重要だという議論に移ります。結局のところ、リスクを抑えるためには多くの知見や支援が必要であり、リスクマネジメントの観点でもネットワークは必要性が高いという議論となりました。

 とくに長期的な観点で研究開発・事業投資を行う場合はリスクが非常に高くなります。またリスクを乗り越えた先にあるリターンについても、抽象的なものしか見えなくなります。したがって、ネットワークを構成しておくことは、とくに長期的な観点で研究開発や事業を行っていくうえで有効だということが見えてきました。

 しかしながら、これらネットワークを活かし、リスクマネジメントを行い、失敗からも学んでいくためには、ネットワーク全体を統制していくことが必要です。当然ながら、ネットワークを統制できる人が必要となります。また、統制するひとだけでなく、参加するひともネットワークを理解していなければ瓦解してしまいます。しかしながら、こうしたひとは育っていないのが実情です。議論の中でも、結局はネットワークを活かして成果を創り出していくひとが育っていないことが大きな課題として共有されました。

 では、どうするか。幸いなことに天才的にやれてしまう、個の力で突破できるひとは決して多数ではありませんが存在します。こうした個の力で動ける、いわゆる“出る杭”を徹底的に伸ばす。そして“出る杭”がなぜ“出る杭”になり得たのか、成果に結びついたのかを研究し、定石として何が必要かに落とし込み、教育プログラムにして展開していくことがひとつのやり方として考えられます。いずれにおいても、ひとを育成していく、次世代を育てる、ということは研究ネットワークを価値あるものにしていくために重要な要素になりそうです。

 

リーダーシップ?フォロワーシップ?ファシリテーション?カタカナ能力・スキルを整理してみよう。

 カタカナを整理してみようシリーズ第2弾。今度はファシリテーションとか、リーダーシップとか、フォロワーシップとか。カタカナで表現される、組織内で必要となってきている能力・スキルについて、事業脚本家としての経験を踏まえ、今回も愛読書「キングダム」を例えに使って整理してみたいと思います。一般的な定義とは異なるので、悪しからず。

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 カタカナの能力について、まずは前提を整理してみましょう。ファシリテーションやリーダーシップ、フォロワーシップなどはあくまでも能力です。そしていずれも組織内、ひととひとの関係性の中で必要な能力です。役割ではありません。したがって組織に紐づくものではなく、個人に紐づくものです。複数持つことができますので、当然、役割と組み合わせていくこともできます。また、育成することも可能です。次になぜこのようなカタカナの能力が出てきたかというと、やっぱり輸入したから。そしてそのときに日本語に翻訳しないまま普及してしまったからなのでしょう。

 ではこれらのカタカナの能力はどんなものでしょう。どんなシーンで役に立つもので、どういった効果あがるものでしょうか。そこで今回も、いろんな人間模様も描かれる漫画「キングダム」を例にとって整理していきたいと思います。突っ込みどころ満載、ご容赦を。


〇リーダーシップ : 影響力
 自らの意思(考え方・想いを明確に示し、ひとに影響を与え、動かす能力です。自分がどうしたいか、どんな将来を実現したいか、ということを明確に示す。複数ある選択肢の中から決断したり、また、不確実な状態でも踏み出していく。そして周囲の共感を生み出し、動き出す・動いてもらうことを実際にやる力です。
 キングダムでは秦の国王・政、伝説の六大将軍・王毅、そして主人公・信も、このリーダーシップ:影響力を発揮します。一番、私が好きなシーンは秦国が存亡の危機に瀕した時に、兵隊ではない女性・子ども・老人を演説一つで奮い立たせた、蕞(さい)でのワンシーンですね。


フォロワーシップ : 協調力
 リーダーシップ:影響力を発揮する・しようとする人に対して、その意思を組んで信じて動く、協力する、同調する能力です。目指す将来像に共感し、その背中を応援し、信じて一緒に道に踏み出しいく・全力で進んでいくための力です。リーダーシップ:影響力を発揮する・しようとする人に対して、活力・勇気を与える力でもあります。
 キングダムでは政を支える昌文君を始めとする家臣たち、王毅を支える隊長たち、信の仲間たちですね。“将軍が戦闘を行くとき、兵は鬼神と化す”という状態がまさにそれです。


〇マネジメント : 対処力
 物事が進んでくなかで変わっていく状況を適切に把握・分析し、問題を発見し、冷静に対処していくための能力です。リーダーシップ:影響力を発揮する・しようとする人や、フォロワーシップ:協調力を発揮する・しようとする人たちが安心して動いていくための環境を整える力でもあります。
 キングダムでいうと秦国の王・政を支えるため家臣たちをまとめ、信に頭を下げ、敵対勢力だった李氏の協力を仰ぎ、ときに戦場にも出る昌文君のイメージですね。昌平君や河了貂などの軍師もイメージとして当てはまります。


〇オペレーション : 遂行力
 決めたこと・決められたことを、決められた通りに忠実にやり切る能力です。仲間の目となり、足となり、手となって代わりに動くための力です。
 キングダムでいうところの兵隊たちです。羌瘣(きょうかい)が蚩尤(しゆう)として暗殺の任を受けて動くときなどもこの能力が発揮されるところですね。


コーチング : 促進力
 決めたこと・決められたことにむけて行動を促進するために必要な知恵を与えて、やる気を起こさせて、学びや気づきを得ていいけるようの支援する能力です。人を育てる能力でもあります。
 キングダムでは、主人公の信が出会う人たちがことごとく見せつけてくれています。将軍王毅を始め、敵対した輪虎、ライバルの蒙恬(もうてん)や王賁(おうはん)たちが信に送っている言葉がまさにコーチング:促進力となっていますね。


ファシリテーション : 調律力
 多種多様な考え方があり、立場がある中で、それぞれの力を最大限に発揮できる関係性を創っていく能力です。お互いに響き合う関係性を、楽器を調律するかのようにつくる力です。
 キングダムでは圧倒的にこの能力を発揮したのは、李牧でしょう。合従軍を立ち上げ、秦国に攻め入るにあたり、対立してきた列国を協調関係に持ち込んだ手腕は見事です。

 

 ちなみにこれはあくまでも能力です。似たような言葉で役割を表すことがありますが、それは上記のような能力を発揮することへの期待の表れということですね。